オーケストラ・コンサートのアンコール・ピースとしておなじみのブラームスのハンガリー舞曲。実は元々、オーケストラ作品ではなかったことをご存知でしょうか。21曲から成るこの舞曲集のオリジナルは、ピアノ曲。それも、ピアノ連弾曲です。

1869年に、まず10曲をジムロック社から出版。大人気になり、ブラームスを経済的に安定させました。長いものでも4分半、短いものは1分半足らず。簡単過ぎず難し過ぎず。家庭にピアノが普及した時期で、手頃な楽譜の需要が高まっていました。しかも連弾。家族でアンサンブルを楽しめます。エキゾティックなスパイスが効いていて、これは売れないはずありません。

ブラームスは、伝統的なハンガリーの民謡を連弾に編曲したつもりでした(自分のオリジナルではないので、作品番号を付けていません。WoO 1は 作品番号の無い作品 Werke ohne Opuszahl 第1番のこと (239) opus, WoO, Hess:ベートーヴェンの作品番号参照)。でも実はハンガリーではなく、ロマ(「ジプシー」は差別用語ということで、最近はこの語を使います)の民俗音楽でしたが。

さらに、民俗音楽では無いものも。最もよく知られた第5番は、ハンガリーの作曲家ベラ・ケーレル(Béla Kéler、1820〜82)のチャールダーシュ《Bártfai emlék(バルデヨフの思い出)》に基づいています 1。第1番も、同じくハンガリーの作曲家ミスカ・ボルソー(Miska Borzó、1800?〜64?)が1850年ころに作った《Divine Csárdás(神聖なチャールダーシュ)》によります 2

72年にはピアノ独奏用にアレンジ。翌73 年には演奏会で指揮するために、3曲(第1番ト短調、第3番ヘ長調,10番ホ長調)をオーケストレーションしました。1880年にはさらに11曲のピアノ連弾曲を出版。ブラームス本人がオーケストレーションしなかった18曲は、他の人によってオケ用に編曲されています。

  1. Walker, Alan. Franz Liszt: The Virtuoso Years, 1811–1847. Cornell University Press. 1987, p. 341.
  2. Katia  & Marielle Labèque による静止動画 https://www.youtube.com/watch?v=GPY91D-0LDk 参照。