早いもので、既に12月も半ば。アドヴェント(待降節)真っ只中です((56) アドヴェントと音楽参照)。聖フィル・コラムで書いていた「クリスマスに聴きたい音楽」シリーズ、ここオケ部屋でも続けたいと思います。part 10 として今回取り上げるのは、ローリゼンのモテット《おお、大いなる神秘よO Magnum Mysterium》です。

モテットとは、ラテン語を歌詞とする多声宗教曲。オケ部屋なのになんだ歌の曲か、と言わないでくださいね。器楽奏者や器楽愛好家のなかには声楽がちょっと(?!?)苦手な方もいますが、クラシック音楽のルーツはカトリックのお経であるグレゴリオ聖歌。楽器奏者にとっても歌は、常に立ち返らなければならない音楽の原点です。カンタービレ(歌うように)って、全ての楽器演奏の理想ですよね。

《おお、大いなる神秘よ》は、ルネサンス時代のスペインの作曲家ビクトリアのモテットを既にご紹介しました((60) part 4参照)。今回もビクトリアと同じ、クリスマスの朝課(一日8回祈る聖務日課のなかの最初のお祈り)に歌われる、レスポンソリウム(グレゴリオ聖歌の種類)の歌詞に作曲されています。無伴奏のア・カペッラ様式、混声4部もビクトリアと共通。ただ、響きはかなり異なります。

それもそのはず。モートン・ローリゼン Morten Lauridsen は1943年アメリカ生まれ。1548年生まれのビクトリアと、400歳も違うのです。

南カリフォルニア大学で作曲を学び、博士号取得後の1967年から同校で教えています。2006年、National Endowment for the Arts (アメリカの国立芸術基金)が「American Choral Master(アメリカの合唱の巨匠)」に指名。また、2007年には「音楽の美しさと力強さと精神的な深さを結びつけ、世界中の聴衆を感動させる輝くような合唱作品の作曲により」ジョージ・W. ブッシュ大統領(当時)からホワイト・ハウスで National Medal of Arts(アメリカ国民芸術勲章)を授与されました。

《おお、大いなる神秘よ》は、1994年の作品。4声が基本ですが、ときどき声部内で2つあるいは3つに分かれることもあります。ときどき聴かれる不協和な響きが、とても魅力的。「ぶつかり」のさじ加減が、絶妙なのです。無調ではなく調性に基づいた音楽ですが、9の和音(たとえばソ、シ、レ、ファの7の和音に、もうひとつ3度を加えたソ、シ、レ、ファ、ラ)のような不協和な響きを使い、それが慎重に協和音に解決される「緊張と弛緩」が音楽の流れを作ります。

キングス・カレッジの聖歌隊がゴシック建築のチャペルで歌う動画(https://www.youtube.com/watch?v=Q7ch7uottHU)で、中世と現代の融合をお楽しみください。

おお大いなる神秘よ
そして驚くべき秘跡よ
動物たちが見たとは、生まれたばかりの主が
まぐさ桶の中に横たわっているのを。
おお祝福された乙女よ、その胎は値したのだ
主イエスキリストをみごもることに、
ハレルヤ(細川哲士訳)