《オベロン、あるいは妖精王の誓い》って、どんなストーリーかご存知ですか。《夏の夜の夢》にも登場するオベロンは、妖精の王様。奥さんは、妖精の女王ティタニアです。この2人が喧嘩する(《夏の夜の夢》と同じですね)ところから、お話が始まります。

オベロンは、13世紀フランスのシャンソン・ド・ジェスト(武勲詩)「ユオン・ド・ボルドー Huon de Bordeaux」に初登場。騎士ユオンはカール大帝の息子を殺してしまい、死刑を免れるために「バビロンの Gaudisse 王の宮殿で最初に会った男を殺し、王の娘エスクラモンドに3回キスし、王のひげと4つの臼歯を持って帰る」という難題を与えられます。でも、オベロンの助けを得てやり遂げることができました。

14世紀以降、1万行以上にも渡るこの長編詩に6つの続編とプロローグが加わり、3倍の長さに。1540年ころジョン・バウチャーにより英訳され、シェイクスピアもこの叙事詩を知ることになります。クリストフ・マルティン・ヴィーラントの叙事詩「オベロン」(1780)の元にもなり、主人公の名はヒュオンとレツィアに。ジェームス・ブランチェが英訳し、これがヴェーバーの台本の元になりました。

オペラ(正確にはジングシュピール)の場面はあちらこちらに飛びます。妖精の森からカール大帝の宮廷、バグダッド、アフリカのチュニスまで。ストーリーは複雑で、まとめるのが難しいのですが……1

第1幕 オベロンとティタニアが男と女のどちらが移り気か言い争い、逆境の中でも心変わりしないカップルを見つけるまで仲直りしないと誓う(これが妖精王の「誓い」ですね)。ボルドーの騎士ヒュオンがカール大帝に、ほぼ実現不可能な条件(バグダットに行って太守の右側に座った男を殺し、太守の娘レツィアにキスして結婚する)を与えられたことを知ったオベロンは、妖精の角笛をヒュオンに、魔法のゴブレットを彼の従者シェラスミンに与え、彼らをバクダッドに送る。

第2幕 ヒュオンはレツィアの結婚式に行き、彼女にキスし、夫バベカン王子を殺す。角笛を吹いて皆動けなくなった間に、ヒュオンはシェラスミンとレツィア、彼女の侍女のファティマと一緒に逃げる。しかし、フランスに帰る船が嵐で難破。アブドゥラに率いられた海賊船はレツィアをさらい、ヒュオンを置き去りにする。

第3幕 4人は奴隷にされている。チュニスの太守アルマンソルはレツィアを好きになるが、レツィアは拒む。アルマンソルの妻ロシャナは嫉妬し。夫を殺させ自分と結婚させようとヒュオンを誘惑するが、アルマンソルに見つかる。ヒュオンとレツィアが火炙りにされそうになったときオベロンが現れ、試練は終わったと告げる。オベロンとティタニアは仲直りし、ヒュオンはカール大帝に使命をやり遂げたと説明。ヒュオンとレツィアを称える合唱で幕。

数多い登場人物の中で、歌を歌うのは8人だけです。

  • 妖精王 オベロン Tenor
  • オベロンの従者 パック Alto
  • ボルドーの騎士 ヒュオン Tenor
  • ヒュオンの従者 シェラスミン Bariton
  • 太守の娘 レツィア  Soprano
  • レツィアの従者 ファティマ Mezzosoprano
  • 人魚2人 Soprano

カール大帝、バグダッドの太守、バベカン王子、アブドゥラ、アルマンソル、ロシャナらは、台詞のみで歌いません。妖精の女王ティタニアは、なんと黙役。台詞も言わないのですね。意表を突く設定です。

  1. 以下のあらすじは、Brown, Clive, “Oberon, or The Elf King’s Oath.” Oxford Music Online, https://doi.org/10.1093/gmo/9781561592630.article.O003858 を要約しました。

Comments closed

css sheet:https://shaverpoint.com/